(今回の「アイキャッチ画像」は、向ひなのさんに描いていただきました!)
千葉県柏市で、地元に伝わり今も残る「昔話」は40を超えるそうです。
一つの市でここまでたくさんの「昔話」が残っているのは、伝えられていた話をずっと昔の方が一冊の本にして代々残していたからだといいます。
現在は、昭和60年に柏市教育委員会が発行した本によって語り継がれていて、昔話自体は現在、柏市のホームページで見ることが出来、柏市観光協会でも今後情報発信に取り組んでいくそうです。
そんな身近な地元の昔話を読んで、実際に話があったであろうという現地へと行ってみましたので紹介します。
「鷲山のむじな」かんたんに
昔むかしの増尾村に「鷲山(わしやま)」という自然豊かなところがありました。
一軒の古びた山小屋に「おも」という女の子とその母親(おものおっかあ)が二人で住んでいました。
一匹の「いたずらむじな」が「おものおっかあ」の背中におぶさってきて、わけを聞くと、いつも「おも」がおぶさっているのを見て一度でいいから自分も「おものおっかあ」のあったかそうな背中におぶさってみたかったと言います。
むじなのことがかわいらしく思えた「おものおっかあ」は、そのままむじなを自分の背中で眠らせました。
山へ帰っていったむじなでしたが、その後、季節ごとに山で摂れる美味しいものが玄関先に置かれるようになったというお話です。
増尾地区の「鷲山」へと行ってみた
アーバンパークラインを使って増尾駅で降り、増尾地区の「鷲山」と呼ばれていた場所まで行ってみました。
調べると、ニッカウヰスキー柏工場がある場所あたりが「鷲山」と呼ばれている地域だったとか。
水のきれいな地区
(「土小たんけんたい」のメッセージ!これを書いた隊員はもう30才近くなる?(笑))
近くの増尾城址公園の北側には、増尾湧水という場所があり、文字通り湧水が出ています。
ニッカウヰスキーが柏のこの場所に工場を建てたのも、水が豊かで綺麗だったからでしょう。
なかなか見つからなかった「鷲山」
「鷲山」といわれていた場所を探し求めて、1日目、ニッカウヰスキー柏工場の周囲を歩きまわり、歩いている住人の方や、近くの神社にも行き話を聞いてみたものの、「鷲山」なんて聞いたことがないという方ばかり。
1日目は他にも行きたいところがあり、その地区を後にしました。
見つからなかった鷲山、どこにあるのだろうと柏市観光協会に尋ねると、鷲ノ山公園という場所が近くにあるとか。
次の週に再度行ってみると、確かに住宅地の中に2カ所の「鷲ノ山公園」を確認しました。
確かに、このあたりが「増尾村の鷲山」だったに違いない。
なぜこのようなお話が伝わったのか(勝手な考察)
鷲山という場所
現地へ来て見ると、今ではすっかり静かな住宅地になっていますが、昔は緑が多く水も綺麗でキツネやタヌキがたくさんいたのだろうなと想像しました。
森や自然との共存の中で、生き物を大切に、自然に優しくしていれば、自然からお礼が返ってくるんだよというメッセージが聞こえる気がします。
(逆にいつもお世話になっている自然や生き物に感謝の気持ちを忘れてはいけませんね)
なぜ、タヌキでなくて「むじな」なのか
「鷲山の狸」ではなく、「鷲山のむじな」です。
では、むじなとは、何でしょうか?
筆者は書籍などで色々と調べましたが、「むじな」の定義はどうもあいまいでした。
タヌキはタヌキだけど、タヌキに似たアナグマのことを言うとか、タヌキやアナグマ、ハクビシンなど似た者を全部まとめて「むじな」と言うとか。
法学部の学生なら一度は通る「自分はたぬきを撃ってない、撃ったのはむじなだ」という「たぬき・むじな事件」というのもあるほどに、タヌキとむじなはあいまい・・・。
この「昔話」ではあえて「狸」とくくらずに、読み手に色んな動物の可能性を与えてくれています。
様々な多様性を理解し尊重する世の中ですから、タヌキでなくてもそれに似た色んな動物を想像しましょう。
たぬき・むじなのイメージ
この周辺地区には、むじなやタヌキ、狐などのお話がたくさん残っています。
他の昔話では、彼らは化けるのが得意で、よく何かに化けて人間にいたずらをするイメージです。
タヌキは、狐よりもどちらかというとドジっぽくてのんびりしている感じでしょうか。
狐は化けるのが得意だけど、タヌキは女の子に化けてもシッポだけ隠せずにタヌキのままだったりするのを想像しちゃいますね。
都合が悪いと寝たふりを決め込む「狸寝入り」なんて言葉も聞きます。
どこか愛嬌を感じるのが狐よりもタヌキ、むじなでしょうかね。
「鷲山のむじな」感想
どこにでもありそうなお話だけど、ずっと残って欲しいお話。
昔話特有ののんびりした空気と、なんとも可愛らしいむじなの姿が目に浮かびます。
最初は「いたずらむじな」と思っていたけど、おもが背中で眠っているのを見てずっと「おものおっかあ」の背中におぶさってみたかったむじな。
むじなの小さな思いを、大きな心で受けてあげている「おものおっかあ」です。
正直、こういう何でもないどこにでもありそうな昔話をブログでわざわざ取り上げて何書こうかと思っていましたが、こういうお話が柏市で残っているということが素敵だと思いませんか?
人にも、動物にも、自然にも優しい柏市です!
「鷲山のむじな」最後に
柏市でも、増尾地区や逆井地区、藤心地区にはかなりまとまってお話があることに気付きました。
増尾城址などの城跡も多いこの周辺地区、柏でも歴史が多く面白いスポットです。
地域にまつわるお話を読んで実際にそこに行って思いを馳せてみるのも楽しいものですね。
おそらく、そこ周辺に住んでいる方でも知らない方は多いはずですよ。
今後も柏市の昔話から色んなことを考えて地域を発信していきたいと思っています。
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